居酒屋物語

友人から電話があり、今、BSハイビジョンで茅葺の模型を作っている人が出てるが知ってるか?知ってるよ。新潟県長岡市の方でしょう。100/1で作っていると言うが、凄いな!所で今からどうよ?一杯!何時もの居酒屋で?いや!隣の居酒屋で?女房に送ってもらった。友人は先に着いて待っていてくれた。模型の話を少ししたら、行き付けの居酒屋の話になった。

あの店、最近おかしい?料理も悪いし、お客も悪い?どうしてそんな事言うの?貴方の店でもないのだから、大きなお世話でしょう?そうじゃないんだよ。あの店はママに頼まれて、自分が設計、監督した店なんだ。それが、最近は、出入りしているお客が、悪いとか料理がとか、愚痴を言い出した。そんな事どうでも良いでしょう?自分が監督設計した店が開店出来た事で、喜んで良いんじゃないですか?会員制居酒屋で無い限り、想定したお客以外の方も来るだろうし、お客は毒も薬も持ってくる。それを選別するのは、経営者〔ママ〕の才覚でしょう。経営に携わっていない友人が、どうこう言う事はないのでは無いかと話した。

十数年前の事だが、私の友人が焼き鳥屋をやりたいと、相談してきた時の事をその友人に話した。その友人は当時、奥さんと離婚して一人で晩酌するのが寂しいから儲けはどうあれ、仲間達と気楽に安くて良い物を提供していきたい。協力して欲しいと言われた。即座に日中仕事をしながらでは、体力的に無理ではないか?と反対したが、その友人も相談と言うより、言い出したら後ろ向き出来ない性格で、前進あるのみ。バックギアは持っていない、言わば相談と言うより私に宣言しに来たのだ。それならと、お店のレイアウトや焼き鳥の試食会を何度も私の自宅工房で繰り返した。

友人は自宅の車庫を利用して、私と収集した、数百年煙に燻された古材を使い、カウンターはやはり燻された松材を割ってバックにはケヤキの収納を取り付けた。事も有ろうに、オープンは関西大震災の当日だった。オープン時、夢想庵特製の「つくね」の作り方を伝授して、私の役目は終ったと話した。これからは、時々お客として、立ち寄らせて貰うし、もしもこれから先、友人が嫁さんを貰う事があれば、その嫁さんと仲良く店をやればいい。その時は、俺はこの店を卒業だなと話し実行してきた。自分の力を入れた店だから、その行く先を案じて心配し、余計な事を言ったり、取り越し苦労や助言が仇になる事を配慮した。

予定通り?彼が50歳の時、20歳も若い嫁さんを貰い幸せ一杯だ。その後、3人の子供にも恵まれ、嬉しい苦労も絶えない?宣言通りここ数年、彼の店にもご無沙汰だったが、知人達の冠婚葬祭で出逢い、こんな所でしか逢えない友人でもしょうがないな~!これからは、月に一度位は女房の運転で焼き鳥を食べに行く約束をした。

お店や経営者に対して、自分の思い入れが大きければ大きい程、その店の進むべき方向やお客の動向が気になるものだし、応援団は自分の気持ちの中で一区切りをつけないといけないと思う。俺が俺がの「我」がいけない。

私の友人も、何時もお店の主役で居たいのだろうか?頼りにされて相談され自分の思うようなお店が作れて、完成したんだから、それから先は、多くのお客さんにお店を育ててもらえば良い。栄枯盛衰もお客と経営者の考え方一つだと思うのだがどうだろうか?部外者は出過ぎない事だと話した。そして、壁に当たりまた相談されたら、酒飲みならではの「のんべえ」料理の一つも教えてやれば良いのではないかと私は思う。

話は変わるが、私も息子が嫁を貰う前には、今後の事、当世の事など随分、意見をしたし、バトルもあった。しかし嫁を貰ってからは、少々な事では意見をしないし、今まで意見した事がない。息子夫婦を信用している。嫁も本当によくやってくれている。

息子に話す。お父さんはお前を信用しているが、信頼はしていないと・・・・〔笑〕そんな、息子との男同士の会話が楽しい今日この頃なのです。今回の居酒屋での話と同じに、可愛いから遠くから見てやる事も必要だと思う。

その息子が、先日、切実な様子で仕事の悩みを打ち明けた。今までも、仕事に対しての愚痴や相談は有ったが、仕事を取る人〔営業〕が一番。現場は効率の良い仕事を心がける事だと話して来たが、今回は、どうも様子がおかしい?真剣なのである。社長と部下の板挟み?これは、息子のSOSだと感じ、息子の会社の社長〔私の友人〕に、この二十数年付き合ってきて初めて相談した。

息子の勤める会社の社長と焼き鳥屋の友人は同級生で私より10歳年上だが、何故か?正月には必ず私の自宅に挨拶に来てくれる不思議な関係なのである。そんな私が会社に行ったものだから、友人も相当に驚いた様だが、決して此方の意見を通すのではなく、自分似の馬鹿息子だし、まだ若く、考えも直線的だが何とか面倒を見て欲しいとお願いしてきた。もしも、息子の我がままで、会社を退職する様な時には、勘弁して欲しいと話した。息子は仕事に対しては自身満々で日々を過ごしているが、お前くらいの仕事をする人は、世の中に沢山いるよと、何時も話してきた。

その日の夕方、息子と社長が真剣に話し合った様だ。清々しい顔で、帰ってきた息子が、親父、社長に何を話したの?突然社長の態度が変わった?と言って来た。何も話してねぇ~よ。俺似の馬鹿息子だから、宜しく頼むと言っただけだ。 居酒屋にでも行くか?息子も今日は飲みたい気分だな。女房に送ってもらった。どうやら、社長が馬鹿息子の意見や話しを聞いてくれたようだ。自分なりの意見を言えば、今まで以上に責任がついて来るだろうが、経営者への階段だと思って頑張って欲しい。自分の思い通りに成らないのが世の中の様だ。 息子が有難うね。と礼を言った。お父さんは何もしていないよ。しかし、何処の親も自分の子供が一番可愛い。唯の親馬鹿かも知れないが、子供のSOSを感じ取れた事が、そして息子自身が社長との話し合いで問題を解決できた事が嬉しく感じた。

居酒屋の経営も友人、知人、夫婦、親子関係もあまり立ち入りし過ぎない事ではないか?自分の中に、やってやった!と言う思いが何処かに有るうちは、上手く行かない様に思う。楽しく遊ばせて貰った位に考えると良いのかもしれない。例外は有るが、特に公務員のOBに有りがちな、上から目線はいけない。公務員と言う組織しか知らないで、世の中を解った様な勘違いをしている方達も多くいる。先日も何処かの県職員が女子トイレに小型カメラを取り付けようとして逮捕された。初老を過ぎて自分の立場も解らない様では、話にならない。

お父さんの趣味について、どう思う?お前や嫁に、やがてこんな物〔茅葺模型、骨董品〕を残されて困った。と言われないように生きているうちに処分してしまおうか?考えているんだ。と話したら、邪魔だ何て思わないから、残して欲しいと真剣に言ってくれた。処分して、女房と気まま旅でもしようか?とも目論んだが、夢と消えそうである。

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