茅葺民家模型秋田県・由利本荘市
各県の民家の特徴や分布を解説

自然的風土と民家のかかわり

「小林昌人先生著・民家と風土」[ふるさとのすまい日本民家集、昭和37年日本建築会発行」「会津の屋根職人、菅野康二先生著」「福島の民家と保存、草野和夫先生著」等を参照した。茅葺の民家を見るにあたり参考にして頂いたり、予備知識としていただければ幸いです。ここでは上記の本を参考に自分が散策した感想や民家に対する想い等、北海道と東北6県について書いてみる。簡単な解説や説明ですが、少しでも茅葺きの民家を含め総称しての「民家」に興味を持っていただければ幸いです。

1.豪雪・寒冷への適応
「地形的配慮と屋敷構え」
日本列島には、冬になるとシベリアからの季節風が雪をともなって吹きつける。この風が奥羽山脈・越後山脈・三国山脈・飛騨山脈・中国山地にぶつかると多量の雪を降らせ、積雪3,4メートルに達する所も多い。例外はあるが、これらの地方では、屋敷を構えるに当たって山や台地・丘陵などの南側や東側で、しかも風雪の影響が多少なりとも少ない地形を考慮し、しかも雪崩も起きず、雪の沈降圧も受けない場所を選んでいる。しかし農耕地の都合や道路河川など様ざまな条件から理想どうりにいかない事も多い。その様な場合、屋敷回りや屋敷構えを工夫している。一般には風雪の強い方向に屋敷林や築地松などと呼ばれる防風防雪林を設ける。

2.屋敷の造りと細部の工夫
「雪国ニッポン」も春の訪れと共に急速に雪は消え、夏季は高温多湿な気候となる。
したがって豪雪地帯の民家とはいえ、夏を涼しく過ごす「夏を旨とすべし」とした日本家屋の基本的な条件を満たす造りとしなければ成らない事に変わりない。表日本の普通の家は、直屋または一本屋・1つ屋等と呼ばれる形の物が多い。
つまり棟が一本のもので、屋根は茅葺き、入り口は平入り、間取りは土間と床上部からなり、床下は風通し良くし、各部屋の周囲には障子戸と雨戸をたてまわした開放的な造りになっている。しかし寒冷な豪雪地帯ではこの様な家に住んだ場合、夏は良くても降雪期には不都合が生じる。例えば家の大戸を開ける度に、外の外気が直接室内に入り寒い。
また吹雪の時は雪が吹き込み、積雪が多い時には大戸を開けて外に出ようにも雪に埋まって出られない。雪がそれほど積もっていないと思い不用意に外に出れば、大屋根に積もった雪が落ちてその下敷きになる危険もある。一方、野外の雪の中に居た人が、大戸口から土間に入ると、笠や蓑・衣服・持ち物などに付着していた雪を室内に持ち込んでしまう。
この様に土間の雪が吹き込んだり持ち込まれると、その雪は室内の暖気で溶け土間はぬかるんでしまう。外厩で馬を飼う場合は、その世話をするたびに深い雪の中を往来する事は大変なので、馬にとっても寒い。物置・納屋・便所等も同様で、この様な事を防ぎ、さけるために、豪雪地帯の民家では、さまざまな工夫をしてこれらに備えている。
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