収穫の秋、はせ掛け(はさ掛け)

10月に入り、東北は稲刈りに最盛期である。地方への出張時も、早朝ウォーキングをするのが日課だが、10月2日15日青森県弘前市で朝の4時から2時間半ばかり弘前市内から最勝院方面を歩いたが、私の住む南東北とは違い、もう手袋無しでは歩けない位に、夜明け前は冷え込んだ。ウォーキングが終わりコンビニで買い物をしたが、手がかじかみ財布から小銭を取り出せない状態だった。間もなく八甲田の山頂付近は紅葉の時期となるだろう。

津軽地方の林檎農家は春先の遅霜と二度の降雹で今年は散々な目に逢っている。春、残雪の中での枝打ち、受粉、実すぐり、反射シートを張り、全体に均等に色が付くように実を回転させたり、掛かった手間は、同じなのに収入は大打撃の様である。本来、高値で取引されるはずの林檎が「ひょう太君」として売り出してはいるが、価格は本来の価格に程遠い様だ。知人の林檎農家の親父さんが「今年は林檎を売っては生活出来ないから、クズ林檎(遅霜や降雹にあった林檎)を主食にして生活するしかないと話した言葉が耳に残る。

10月1日岩手県一関市に泊まり、早朝ウォーキングした時に、偶然にも、一見普通に見える、一本杭の「はせ掛け」(はせ掛け、はさ掛けは、刈り取った稲束を天日干しする為の名称、以後いわきでの呼び名「はせ掛け」と呼ぶ)の稲束が螺旋状に積み上げられ見事だった、一本杭のはせ掛けはクロスに掛けたり、全方向に均等の稲束を掛けていくのは普通だと思っていたが、今回の螺旋状のはせ掛けは、初めて見たというか?偶然にウォーキング中で遭遇した?今まで、見えて居なかったのかも知れないが?この何年かは、東北を中心に稲刈りの様子や「はせ掛け」の地域や県により違いが解る位の資料と言うか写真がまとまって来たので、今回、紹介する事にした。

かなり前の事だがラジオで聞いた事がある。海側(海岸線に近い地域)では稲束を横や櫓を組んで積み上げる事が多く、山側(山間地帯)では一本杭で稲穂を干す事が多いと聞いた事があるが、これには確かに諸説理由が有るとは思うが、実際に散策してみると、以外にその限りではない。海側であれ、山側であれ、稲作地の面積や地形、地理的条件、気候風土や風向き等の条件により、稲の干し方も変る様だ。

新潟から日本海側を山形方面に海岸線を走ると、山形県との県境付近の防波堤すぐ近くに小さく、稲作をしている地域がある。そこは、耕地面積も小さく、横に伸ばした「はせ」が2段にも4,5段にも高くなり脚立の登って稲束を干す。新潟県十日町や高柳町、秋田県南でも、同じ様な光景をみた。

いわき市の小川町の相川集落は、宮崎アニメに出て来そうな一本杭に稲束が掛けられ一番下の部分には稲束が逆方向に置かれそれをベースとして、稲束が掛けられる。4本足の可愛い妖怪達の様にも見える。また、青森県の六戸町周辺のはせ掛けは、「ねぶた」か歌舞伎役者の様にも見える干し方もある。

私が感じたのは、稲束の干し方は気候条件や風向き等耕作条件を考慮するのは勿論だが、何世代にも渡って家族に受け継がれてきた、その家の流儀と言うか?干し方の拘りがある様に思えて成らない。同じ地域でも、その田んぼの所有者の違いが「はせ掛け」の違いとなって現れる事も多いのが現実だ。

はせ掛けについて、新潟工場の蒲原郡出身の同僚に尋ねてみた。彼曰く、新潟県の山間部の稲作は棚田や一枚の田んぼの面積が小さく、はせ掛けの時は、出来るだけ自宅や倉庫に近い、屋敷林にはせ(横木)を掛けて稲束を何段にも積み上げると言っていた。すなわち、脱穀や籾すりの事も考えての事だと話してくれた。屋敷林のはせを掛ければ風に飛ばされる事は考えなくても良いと話していた。納得である。

昨今では、トラクターやコンバイン、乾燥機の機械化が進み、天日干しの様子を見ることは、茅葺きの民家同様に少なく成ってきた。東北は、稲刈りのシーズンやはせ掛けの様子を見ることは比較的容易だが、全国となると、稲刈りのシーズンや天日干しの時期は決まっているので以外にその様子を拝見するのは、大変かもしれない。これまで撮影した、「はせ掛け」の様子の写真をを少しアップしてみる。これを機会に全国の稲束の天日干しの様子など掲示板などで拝見出来たり、情報の交換、地域による干し方の違いなど、紹介して頂けたら嬉しいことです。
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