芝棟とクレグシ

東北地方の民家も太平洋側と日本海側寄りの民家では、屋根の形式も内部構造、間取りも変化がある。これは、両地域の気象条件や文化的習慣や伝統が異なるからなのか。
青森県の民家も津軽と三八下北地方では、外観からはっきりした違いがある。
津軽の林檎農家は大きな寄棟屋根を持ち、その正面の出入り口に小さな雪囲いに庇「あまや」「ヒラシ」が取り付けてある家が多い。棟仕舞は杉皮で覆いその上を木枠で押さえその上に小さく可愛いい、煙出し「ハッポー」が取り付けてある。

一方、三八下北地方から岩手県北部にかけての民家は同じ様な大きな寄棟造りの茅屋根を持っているが、棟仕舞は木枠で出来た棟押さえなどは一切なくやや勾配の緩い屋根が素朴な姿を表している。正面の「あまや」「ヒラシ」や雪囲いもこの地方には見られない。
日本の民家には近畿地方の様に入母屋の破風を持ち柔らかな曲面を作り出す様に美しく仕上げられたものや、九州、沖縄農家の様に棟の上に装飾を兼ねた大きな棟押さえを置くのも等、多種多様の表現が見られるが、三八下北地方の民家はその中でも装飾的な意匠の少ない民家の棟仕舞と言えよう。しかしそれだけに、茅葺き屋根独特の立体感を力強く出している。
この地方の茅葺の民家をはじめて見た方達は、朽ち果てた棟に雑草が生えた様に見えるだろう。
これは、芝棟「クレグシ」と呼ばれ茅を積んだ上に野芝の生えた土置いたもので春になると、そこから色々な草花が芽生え可憐な花を咲かせる。以前は、東北地方の太平洋側寄りの地域や、関東地方西部の山地に多く実在し、甲府盆地や諏訪地方、山陰地方にも芝棟を持つ家があったと言う。
また関東では芝土の中に、「いちはつ」のような菖蒲の仲間を植える習慣もあった。現在は、三八下北地方に多く芝棟の民家が残る。

芝棟を持つ民家の地理的分布や、構造から見るとやはり自然的条件と深い関係がある。
芝棟は暖かくて湿気の多い地方にはでは、棟が腐り痛みやすく不適当なのです。前項で述べた分布地域では、山陰地方を除けば、いずれも日本では、比較的寒冷で乾燥した地域とされる。
しかし正確にどのような気象条件のもとで芝棟の民家の存在したかについては、未だ解らない点が多いと言う。下北地方の民家は破風などを持たずに、寄棟造りです。
この様な屋根の形は力学的から見ても、四方からの風の力に対して、一番強固であり、破風などの余計な工作物がないので茅屋根としては、一番作りやすい。
日本における、茅屋根の形式の地理的分布では、東北・関東・四国・九州などでは、寄棟造りが多く、近畿地方のように、早くから文化の開けた地方には、破風を持つ入母屋造りや切り妻造りの民家が多いとされている。
また養蚕業が早くから行われた地域では、切妻造りや片切妻、突き上げ屋根、あづまや、榛名型、赤城型、等など変わった。
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