お騒がせ A君の再就職 1

我が店舗の名物男性社員A君、手先は究極の不器用、しかし頭は良い方に入る

だろう。良い方に入るだけで、今、お騒がせの舛添さんほどの秀才では無く、

何処にでも居る程度の能力の持ち主で中の上かな・・・・私より優秀な脳力

を持っている事だけは、間違い無い(笑)

しかし、これといって取り柄がない。以前にも書いたかも知れないが、時間に

ルーズ、お金にルーズ、女性にもルーズ・・・しかし、何事にもルーズな、こ

の男、女性や友人に対する気配りは一流なのである。

そんな男が、数年前、会社経営者である私の友人Nさんとお店で知り合う事と

なる。

ご夫婦で買い物に来ている時、社長、私にも出来る仕事が有れば、雇用してく

ださい・・・と話す。

お前にも出来る仕事は有る事は有るには有るが・・・・お金はいくら貰えるん

ですか?

仕事に寄ってだな・・・と話す。

百戦錬磨の社長さん自宅に戻り、ご夫婦で話した様だ。仕事がどんな内容か、

やった事も無いのに先にお金の話をする様では、雇用する訳にはいかないとの、

ごもっともな結論。

友人Nさんは、私に仕事の内容も分からないのにお金の話を先に切り出すよう

な奴は信用出来ないし雇用も出来ないな・・・。

女房からダメだしが出たよ・・と笑う。ごもっともですと相槌を打つ。

NさんA君には、お前の様な頭の良いい奴が働く所ではないし、頭の良い奴に

は馬鹿馬鹿しくて勤まらない様な単純作業だから、もっと能力を生かせる会社

を探した方が良いと、A君を傷つけない様に上手に断った。

A君、その後また、お店に来る原発関係の人夫出しをしている男性と知り合い、

再就職を打診。雇用の仮契約を結んだ。

前出の社長Nさんも原発関係の電気工事業、何処でお世話になるか分からない

ので、私は今回の就職内定の挨拶と心づくしを届けて置くように話した。

しかし、間に入った人夫出しが仕事先に履歴書を出したが、どう言う訳か、仕

事先からA君不採用の連絡が入ったようだ。

会社には退職願の提出、再就職先から断られたA君、しかし翌日は以前から予

約していた除染作業の講習会で隣町へ。

私が休み明け出勤すると、次長が夢想庵さん、昨晩A君から相談されまして、

再就職に失敗して今では食事も喉を通らない。

このままでは、おかしくなってしまうと・・・・本人から相談がありまして・・

それがどうした・・・

店長に相談したら、退職願いを出してから時間も経っていないので、総務に

頼んで白紙には出来るが・・・数ヵ月後にまた別の仕事が見つかったから辞め

る何て言われたら、自分の立場も無いとごもっともな話をしたとの事。

それで次長はどうしたいんだね?

人員も少ないし、今回は雇用継続で動きましたと私に報告して来た。

誰も彼に再就職や退職を勧めた訳では無い。50歳を目前にして将来を考え

た時、貯えも無く不安になり、少しでもお金を稼げる職場に行きたいとの、

打算的な考えで取った軽率な行動に情状酌量の余地は無い!

退職させれば良い!と私は話した。

企業として、昨今、土日、祝日が休む事が出来ない小売業に良い人材が集まら

ない事は理解するが、それと自己中、軽率、自分勝手は違う。

数日後、A君を呼び話をした。

お前の打算的で自分勝手な行動で送別会をしてくれた仲間や業者さん、会社や

周りにも多くの迷惑をかけた。

どうしても会社に残りたいなら、定年までお世話に成るつもりでやる事だな。

パートさんとトラブルを起こし、金にも時間にもルーズで今度は退職願いの

取り消し・・・お前の様な恥さらしは居ないな・・・と厳しく叱責。

自分の気持ちとしては、送別会までしてもらったんだから、辞めて貰いたいが、

自殺でもされたら困るから、最低でも3年は今の会社で勤める様に話し

た。

後3年経てば、もう再就職何て考える歳では無くなるでしょう。

いや、自分が見えていないお馬鹿さんは、またやらかすかも?

性格は良い奴なだけどね。そして半年が過ぎたのです。

N社長の奥さんもA君は気が利くし人間性は良いんだけど社員としては・・・

と難色を示していたが、時間をかけてA君を観てきた事もあるし、社長の

NさんがA君の人となりを経営者の厳しい目で観て使えると思ったのか?

A君を雇用する決断する。

数ヵ月前、市内のホテルにて一泊でNさん夫婦、私達夫婦、A君の5人で宴席

を持った。その時、Nさんが息子さんのお嫁さんが、車を買い替えするんだが、

未だ程度も良いんだが下取りも安くて勿体無い・・・とボヤいた。

夢想庵さん、誰か欲しいならスタッとレスタイヤも付けてやるんだが・・・

と話す。

それなら、ボロ車に乗っているA君に乗せましょう。車両代は私が払います。

夢想庵さんが、A君に車を買ってやるのか・・・・?と目を丸くしたNさん。

夢想庵さんが買ってやるならお金なんかいらない。と言ってくれたが、そんな

甘えが許される訳も無い。

話が横道にそれたが、いよいよNさんのお嫁さんの車の引取りに向かう事にな

り、A君とNさんが一緒に息子さんの自宅に向かった。

勿論、約束のお金は前日にA君に手渡してある。

車検が近かったので、私の友人の整備工場に依頼、会社に戻った。

これで何もかもこれでメデタシだった。

N社長にお礼を言い、会社の休憩所でコーヒーを飲みながら話をした。

A君は、お金に困っているのかな・・・・・・サラ金からなんかお金を借りて

は居ないんだろ言うな・・・・とポツリと話した。

お金は無いでしょうけどサラ金は無いでしょう。

どうしてですか?いや老婆心だと笑ったN社長。

翌日、A君に話した。昨日、Nさんがお前の事、サラ金からお金なんか借りて

居ないだろうな。と話してたが、どういう事だろうか?

何か変だった。お前何かしたんじゃないか、怒らないから話してみろ。

すると、A君が真っ青な顔して、実は夢想庵さんに預かったお金に手をつけて

しまい、先方に渡すお金が足りなくなり、Nさんに補てんして貰ったと言うで

は有りませんか・・・・今までの私なら間違い無く、鉄拳を振るってました。

しかし、我慢、笑いながらお前な・・・これから雇用して貰おうとしている

社長に「私はお金にルーズです」と言っている様なもんじゃないか・・・・

お前は俺に叱られるより、Nさんの人情に甘えたんだろうけど、大間違い。

経営者は、お前の考えて居る様な「お人好しでは、やっていけない。」

大の男が、そんな物の分別も着かないようではお話に成らない。

今回の就職は辞退しろ!

その夜、私はN社長に電話して、今回のA君の就職を断った。

Nさんも、後継者で息子さんである専務にも了解を得ての雇用なので、些か

驚いた様だが、それより私の剣幕が強烈だったこともあり、Nさんも黙って話

を聞いてくれ、夢想庵さん、分かったから奥さんと変わってくれと何やら女房

と話していた。

そんな、やり取りの中で、私より12歳年上のN社長が穏やかな口調で夢想庵さ

ん、貴方には貴方の信念があり、真っ直ぐに生きて来たんだろうけど、俺はお

袋に「長い物には巻かれろ」と聞かされて生きて来た。

お前も「負ける事」「負けてやる事」を覚えたら、人生もっと楽しく穏やかにな

り楽になると教えられた。

目から鱗だった。

そして、馬鹿たれA君の再就職は破談となり、私が彼に買ってやる筈の車は

知り合いの、整備工場に私の買い値で引き取って貰いました。

喜んだのは、タナボタの整備工場の社長でした。

A君は、何処まで甘えてんだろう。

私に叱られても、小言を言われるか、一つ二つ殴られるだけだが、雇い主に

自分の弱点を見せてしまう神経、私には理解出来ない。

良い奴なんだけど・・・このお金にルーズな弱点が命取りに成らなければ良い

が・・・・

                       機会が有ればつづく・・・



 

 

 

 

 

 

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