骨董よもやま話

久しぶりに、「かわずの落書き」を更新したくなった。

 

震災から5年、3月11日を迎え、6年目に突入・・・

 

更新したくなったと言うより、原発事故で相双地域から避難して来た、知人と友人の骨董

品に纏わる、お粗末な、やり取りについて書いてみる。

 

私の友人Mさんは、いわき市でも自他共に認める指折りの資産家です、自宅も隠居も蔵も、

どうだ、どうだと言わんばかりの豪邸に住んで居ます。

 

私の様な昔で言えば小作人は、長いものに巻かれて、Mさんに強引な事をされても言われ

ても、彼の良いところだけ評価し、喧嘩をしないで、今日まで20年近く付き合ってきた。

 

М氏の友人Hさんの借家に、原発事故で避難した、会社社長が入居してきたのは、事故か

ら数ヵ月後、正確には分からないが、丸4年は過ぎただろう。

 

その借家の隣に住む、友人Hさんの所には週に何度も雑談をしに来るMさんがHさんを介

して避難者の知人N氏と知り合う事になる。

 

M氏も着工から3年かけて、手間賃だけで6,000万かけたと自慢する隠居を建て、ま

た避難者の知人の社長N氏は震災前からやはり隠居?を建築、事故が有ったとは言え、6年

かけて未だ未完成の豪邸を新築している社長さん。

 

地元の富豪と苦労人で事業を興し成功を収めた、避難者の社長Nさん。

まさに、静と動なのである。

苦労人の社長Nさんは地元の資産家M氏の話を上手に聞き、自慢話をされても、決して否

定することなく利口に付き合ってきた。

 

2人が共通していたのが、銘木をふんだんに使っての自宅の新築。

私の様な貧乏人が言うのも何だが、どちらの家も見せて貰ったが、避難して苦労して起業

した、知人N氏の家が遥かに上なのです。

 

文化財や重伝建にしか使われない様な、欅の玉杢や銘木をふんだんに使って造られたその

家は現在では、いくらお金にいとめを付けないで探しても見つける事が出来そうも無い銘

木たちを使っての建築は、大工や建具職人達と依頼主の一体感さえ感じる素晴らしい建物

と成りました。

 

そろそろ、避難地域も避難解除される頃、地元の資産家の友人M氏が、避難の社長Nさん

に骨董品を譲ったのです。譲ったと言うより骨董の世界に引きずり込んだと言うのが正解

かも知れない。

 

知人の社長N氏が、夢想庵さん、実は資産家のMさんから、本物だから心配ないと、骨董

品の陶器や磁器、掛け軸を買ったんだが、大丈夫かな・・・・正直、百や二百の金じゃ~

ないんだよ。

 

陶磁器は、本歌「本物」なら高い安いは有るでしょうけど、あまり心配しなくても良いと

は思いますが軸物は、特にビックネームの方達は贋作が多いですから、そんなに心配なら

鑑定をとったら良いですよ。

 

やがて、子や孫に、今は亡き、爺ちゃんが自慢し困った時には売るようにと言ってた、掛

け軸が何でも鑑定団で観てもらったら3万円、何てことが良く有る話ですからね・・・・。

その軸の作者が尾形光琳、酒井抱一、渡辺崋山など評価が数千万のビックネーム・・・・

Nさんの付き合いの有る、ギャラリーが間に入り、東京美術倶楽部で鑑定して貰うことに

なった。

 

鑑定料3万、真筆なら3万で認定書が出る、駄目「贋作」な時は鑑定料のみ。

3月10日に鑑定結果が出た。

 

結果、贋作・・・・!

 

知人の会社社長N氏は、私の自宅にも何度もご夫婦で遊びに来てくれて人柄も良い夫婦で、

今では古い付き合いの友人の資産家M氏よりも仲良くさせて貰っている。

夢想庵さん、本物ならメデタシメデタシだったんだが、紙切れを本物と偽って買わせられ

て、自分も、はいそうですか、とは引き下がれない。

絶対に間違いない!本物と言われて買ったんだから、返却してくると言う。

真当な話である。

 

私も避難者の社長N氏に何度も言った。その軸に惚れ込んで買ったのなら、贋物でも仕方

ないが、本物だからと保証で買ったのなら、東美「東京美術倶楽部」の鑑定で間違い無く

黒と言われれば仕方ないですね。

 

しかし、Nさん「避難の社長」貴方がお金にも困っていないのに、評価が数千万の軸を数

年前に知り合った知人に格安で売りますか?

私なら家宝にしますよ。

 

こんな裁定が下ると、資産家のM氏がN氏に売った骨董品も怪しく感じてしまう。

自分の手元に残す物は、次の代の人達が困らない様に鑑定を取ると言うのが口癖の資産家

のMさん。

 

確信的に贋物と知りながら販売したのなら、詐欺罪が成立してしまう。

今回は、掛け軸や屏風は返却。もしくは鑑定を貰ってお墨付きを貰ってから再購入となり

そうだ。

 

貧乏人の夢想庵には無縁の購入金額・・・・お金は有るところには有るもんだ。

目利きを自負する人は、騙されたら授業料と諦めるが、素人収集家は物ではなく人を信用

して買うから、厄介な問題が起きる。

常々、いわきで俺より骨董品を持っている人は居ないと、日頃、豪語する資産家のMさん、

鑑定で弾かれた贋物を友人や知人に故意に売却しているなら、詐欺罪で臭い飯を食う事に

成りそうだ。

 

お金は使い切れないほど有る筈なのに、どうして・・・人の欲には限りがないんだな。

M氏はN氏を私の自宅に連れて来る時も、夢想庵さんの所にNさんを連れては行くが、物

を観ると欲しがって無心する男だから口車に乗らないように話していたから、私も警戒し

て付き合わないようにしていたが、自宅を新築していると聞いたので、良かったら私が作

った欅の燈籠をあげますよ。と話したら喜んでくれた。

 

その後、暫く音沙汰もなくしていた所、友人M氏がNさんが夢想庵さんに渡してくれと欅

を持たせてくれたと、連絡してきた。

 

引取りにMさん宅に行ってみると、その欅が私が今まで扱った事が無いような銘木だった。

そんな事から、今までより親しくなり、Nさんと家族ぐるみで付き合うように成った。

 

そして、とうとう彼N氏がM氏から買った、陶器や磁器を観せてもらうことに成る。

 

今までの話を総合すると、かなりの高値で買ってるとは感じていたが、そのガラクタを観

て驚いた。相場の10倍30倍で買わされて居たのである。

 

素人の自信過剰な収集家が私財を投じて鬼集した古美術品が贋物ばかり何て言う「骨董よ

もやま話」を絵に書いたような話が目の前で起こってしまった。

 

確かにM氏は地元でも指折りの収集家、しかし、今回は自宅に有るゴミを避難者で眼の無

いお金持ちのN氏にM氏の看板を盾に売りつけたとしか思えない、粗悪品だった。

 

正に、素人を言葉巧みに骨董の道に引きずり込み、ゴミを数千万で売りさばいたのである。

 

掛け軸、陶磁器、古銭を合わせると数千万・・・・・・庶民の夢想庵には、絶対に手にす

る事が無いようなお金が闇で勿論、領収書無しで取引きされていたのである。

 

騙されたと知ったN氏は、怒り心頭・・・・信用して信頼して居たから、子や孫に残して

やろうと買ったのに・・・・・とボヤいていた。

 

しかし、苦労人で百戦錬磨のN氏、このままでは引き下がらない。

 

ビックネームの掛軸は、判定が黒だったのでMさんは渋々1,050万の返却。

お粗末な陶磁器はNさんの手帳に記載されて居るだけで1,300万弱、桐箱代別途

Mさんの家族を巻き込んでの話と成った。

 

私は、今ではどちらも友人なので、知らない顔で過ごしてきたが、Mさんの娘婿から夢想

庵さん相談が有るんですけど・・・・と電話があり近くのマックで待ち合わせ、事の次第

を相談された。

 

婿さんは出来た男で、Mさんにどんなに叱られても、馬鹿にされても、今

まで口ごたえした事も、言い返した事も無く、只、義理の父親の言いなりで暮らしてきた。

Nさんは、婿さんの3人の子供たちにも毎年お年玉をあげ、長女が吹奏楽部の全国大会が

決まれば10万円の寄付をすると言う、正にMさん家族とも親戚以上に付き合って来たの

である。婿殿が夢想庵さん、爺ちゃんは何時も我が家は其の辺の貧乏人とは違うと豪語し

ているのに、どうしてこんな事をしたんでしょうかね・・・・と話す。

 

それはお金の魔力じゃ~ねえか。

お金は幾ら有っても邪魔にはならないし、眼の無い金持ちを骨董品の世界に引き込み、こ

れであんたも文化人だな・・・などとおだてて贋物や粗悪品を売る。

今まで多くの、収集家やお金持ちの俄コレクターが被害にあって来た歴史を婿殿に話した。

これで、この問題に引きずり込まれた夢想庵。

どちらも友人・・・しかしNさんが被害届でも出した事には、Mさんは人前に出られなく

なるだろう。

 

ある日、Mさんが私の所に来た。そこで話をした、社長どうしてNさんに骨董品を売った

んですか・・・・俺はNさんが欲しいと言ったから売ったんだ!買ってくれ何て自宅に

行ったことも無い。俺は嘘なんか言わない!

それより娘婿の叔父は、ヤクザだから、話をしてNの会社なんか潰してやるからと話して

おけ!と言い切って去っていった。

 

80歳に近い男が、高校生や不良の喧嘩の様な捨て台詞を吐いたのである。

言っておけと言われれば、それなりにはNさんに話さなければ成るまい。

私はNさんに、困りましたよMさんは娘婿の叔父さんがヤクザだからそれに頼んでNさん

を懲らしめてやると話してましたよ。と話すとNさんは顔色一つ変えずに、本当にそんな

事、言ったのか、と聞く。間違いありません。

 

暫くして、Mさんに電話をして、あんたが子供の様な事を言っているなら警察に被害届を

出す。と話す。

 

Mさんは狼狽え、電話口で穏便に穏便にと話す。

 

数日後、Nさん宅で私とMさんNさんで話し合いをして被害額1,300万、Nさんも

授業料だと思って500万は泣こう。800万の返金でどうだと話すが、せこいMさんは

700万にしてくれと話し物別れ、数時間後Nさんに電話をして、800万返金で決着。

私は、解決金との瞑目で書類を作り、立会人となって解決。

 

結果、地元の名士との20年来の付き合いが途絶えたのである。

確かに古美術収集を永くしていると眼が肥えて来て、初期に収集した物は、魅力を感じな

く成る事もある。

 

しかし、今回の事件は、自分の所には置きたくない下手な骨董品を眼の無い素人に売りつ

けただけなのである。

 

Nさんの自宅で夢想庵さん、あんまり喋りすぎだな・・・・とMさんが言う、私は貴方に

話しておけと言われたから話したんですよ。

 

あなたはNさんが売ってくれと言うから売った。買ってくれ何て自宅まで行ったことは無

いと話したでしょう。M社長さんは嘘つきですね・・・と話す。

 

私がNさんから拝見した骨董品、今の売価は最高の金額で100万円位でしょうか。

Mさんが私に言った。夢想庵さん、あんたこれだけの骨董品を持っているのか・・・

私は、持ってません、しかし、もっと良い物は持っています。

 

20年来の友人と決別した最後の言葉でした。

 

そして、Mさんは今も近くのリサイクルの交換会に出入りして、ガラクタを買っているの

です。

Nさんは6月3日に引越し、詐欺師Mさんとの本当の決別に成ります。

 

 

 

 

 

 

 

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