古物商と収集家

骨董品や古民具を収集してから30年近くになる。初めは旧工房に囲炉裏を作ったとき適当な鉄瓶がないかと、市内の骨董屋を訪ねたのが収集のきっかけだった。

その店は古伊万里や古民具〔生活用品や民具、道具〕で埋め尽くされ古民家散策では見慣れていたもの達ばかりだった。工房に模型の数が多くなるにつれて、ランプや自在鉤等も買い求めているうちに、古伊万里に目覚め、古民具、吊ランプ、置きランプ、古伊万里〔江戸中期物〕をメインに収集した。その内にプロの交換会にも顔を出すようになり、警察署の防犯課に行き古物商の登録もして競り場でプロの方達と競り合った。

県内外の露天や平和島の骨董市にも出掛けた。いくら足しげく通っても、所詮サラリーマン高価な物は買える筈がない。しかし、2.3万円位の物なら少し無理すれば何とか成る時代だった。古伊万里は高価な初期伊万里を避け、江戸中期~後期~明治の古伊万里を収集した。

蛸唐草、花唐草の皿や後期~明治の三寸~二尺までの大皿100枚位は求めただろうか?ランプも同じく収集し、吊ランプや置きランプも同じく100本位あると思う。数年前までは玄関や居間に飾って楽しんでいたが、最近は地震が多いので梱包して屋根裏部屋にしまってしまった。

古民具は木や鉄で出来ている物が多いが、陶器や磁器、ガラスはニューやホツ、カケが有れば、物にもよるが商品の価値は半減してしまったり、普段使いには使えても商品にならない物もある。しかし惚れ込んで求めた物を何時も見れないのも寂しいものだ。

地震が来ても大丈夫?であろう吊ランプは居間に飾る事にした。置きランプは御蔵入りである。知人の欅工房さんにも言われたが、古物商の交換会に行っても、プロの方達はいくらで売るからこの位で欲しい。儲けや売価を常に考えての仕入れだし、骨董商やその市場〔交換会場〕にも会主の得意、不得意分野がある。古民具の得意な会主、刀剣が得意な会主、茶器や陶磁器が得意な会主。

その会場に行く方達も目的や収集品に応じて会場を変えて欲しいものを競り落として求めるのである。ここで注意しなければ成らないのがライバルが居る場合、欲しい価格で競り落とすのではなく、相手が欲しい価格以上の価格を言わなくては成らないし、たとえ相手が降りても、荷主〔商品の持ち主〕が競り人に対して販売を了解をしないと、競りは成立しないのである。

プロは高く買っては利幅が取れないし、あまり安くては今度は荷主が了解しない。会主は競りが成立しないと歩銭〔手数料〕が入らない。歩銭は安い所で3~5%10%の所も有った。したがって荷主は歩銭を引かれる事を計算して売らなくては成らないし、競人は売り手にもそこそこ利益を出させ、買い手にもお徳感を、尚且つ自分の所にも歩銭が入る様に競りを成立させないといけないのである。

しかし幾ら古物商の登録をしたとは言え、素人に毛が生えた様な夢想庵。好みの物が盆中に乗ると、熱くなって追いかけて随分高く買って来たような気もする〔笑〕しかし幾ら高く買っても、骨董商のお店で買うよりは遥かに安い。骨董商は仕入れの50倍で儲かった。30倍でまあまあ。と言われた時代も有ったようだ。しかし、そうなるには相当の眼力とお得意様が居る事が条件なのだが、、、、

興味の無い方達から見れば唯の古く汚いランプや皿かもしれない。しかし、どの品物にも買い求めた時の思い出がある。骨董品と一緒にお風呂に入浴、何て事は、日曜茶飯事だった。定年になったら、売ってしまおうとも考えているが、一つ一つの収集品に愛着と想い出があり過ぎて売れないかも知れない? お客さんと金銭的な折り合いがつけば売るプロと物に惚れ込んで買う収集家との違いは、お金に惚れるか、品物に惚れるか?の違いかも知れない。

しかし、ここ数年は骨董品を買わなくなった。競り場には、400年近く前の初期伊万里がポンポンと出品され、中期伊万里や図録物の古伊万里が藍九谷が出品される様に成った。そう!贋物である。贋物は古い時代からあるが、土、釉薬、高台、呉須、手取りの感触や重さ等の約束事が何処か何処か一つ位は首を傾げる所があったが、最近の贋物は全ての約束事を守り、時代まで着けて来る。

したがって、手取りが出来ないネットオークション等では、本歌保障品以外は高価な買い物は出来ない。ランプやガラス製品も同じなのである。自分の目で見て、取って納得して買い求めた物であっても相当な授業料〔贋物〕を払って来たが、現在では、買った物のその殆どが授業料に成りかねない?

収集家?の夢想庵。欅工房さんが言う通り結局、今まで作った模型も数十年かけて集めた古美術品や木材も多分、販売する事も出来ず本当にゴミになったり土に帰ってしまったりしてしまうのかも知れない?

収集家が亡くなれば、残った家族が道具屋や古美術商を呼び収集品を売り払い、それらの一部が交換会に出品されたりしながら、別のマニアや収集家の手に渡る。そうやって何百年も前から繰り返されて来たのか、それで良いのかも知れない。

大方の場合、夫婦で骨董好きは珍しい。ご主人が骨董好きの場合は奥さんが冷ややかで、その逆もある。したがって高価な価格で買い求めた品物でも家族には、まともな買値を言わない事が多いのである。夢想庵の場合もそんな事が大いに有るのです〔笑〕

壊れて困る物は屋根裏部屋に収納した。地震が来て壊れては少し困るが、夢想庵の拙い収集品の一部を紹介する。
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