障子と襖

障子に樹木の声を聞け!

障子や襖など、家の空間を仕切るものを建具と呼ぶ。 その原型は板戸、帯戸。 ここから、建具は日本独自の発展を遂げて来た。

木の枠に唐紙(からかみ)という装飾用の和紙を張った襖。 光を柔らかく反射しながら、部屋全体を包む。

外から光を取り入れるために考え出された障子。 陰影を愛する日本人の美意識がここにも表れている。 薄い和紙で直射日光をさえぎり、柔らかな光に変えるのです。

広い面から光を取り入れるために、木の骨組みは細く作られるようになった。

襖の中や格子戸の中に組子と言われる細工を取り入れ、料亭など華やかな雰囲気を楽しむ場所で、職人が細工の腕を振るった。

一般の障子は縦横の骨組みに紙を貼ったもの。それだけに、職人達は木材の扱いに工夫を凝らしてきた。

ある職人は、「木が立っているときは丸い柱なんですけど、それをイメージしながら、木が立っているままを建具にしたいということを、私たちは師匠から教わってずっと守ってきてます。そしてそれは、理にかなっている気がするんですね、と話す。

建具材について書いてみる。製材した木材を選ぶとき、まず見るのは木目です。

例えば、こちらの木の方が目が細かい。障子や襖に向くのはこっち。とか木目が飛んでいたり、均一で無い、目通りの悪い木は建具材としては、都合が悪い。 建具材の場合、丸太材を柾目に製板する。簡単に言えばみかん割りの様なもので上から下まで線を引いたような木目を柾目と言う。 それに対して外側から指定の厚みに製板したのが板目と呼ばれる。みかん割りと書いたが例えばの話で、本当にみかん割りにすると長押(なげし)材になる。 柾目に製板するにも、製材する職人がどれだけ木と語らいその木を読めるかによって木目の出具合や柾目の鮮やかさが変ってくる。

丸太から切り出した木材は、外側の樹皮に面した方を木表、中心に面した方を木裏と言います。 木表は水分を多く含むため、乾燥するにつれて縮んでいきます。その結果、木裏が反り、表面がはがれやすくなります。

框(かまち)通称縦框(たてがまち)と呼ばれる縦の枠。職人の知恵が表れる部分です。

縦框は、手に触れる外側の部分が木表になるように組み立てます。木表は木目が美しく、トゲになりません。反対にトゲの出やすい木裏は内側にします。

障子を立てると、自然の樹木そのままに木表が外側に来るのです。 さらに、縦框の上下は、必ず立っている木と同じにします。

山々の立つ一本の樹木の、あるがままの姿を意識して作ると言います。 一つの部屋に用いる障子は、一本の木から作るのが理想と言われていますが、現在の木材事情から言わせると難しい事かも知れません。

しかし、そうすることで、色合いや表情が調和し、部屋全体が引き締まります。

製材、製板で木を読み、製作で職人が木の声に耳を傾けながら、組み上げられる障子。和室の繊細な美しさは、ここから生まれ、家の品格は建具材によって決まると言っても過言ではない。
inserted by FC2 system