熱中時間~忙中趣味あり~出演記

2005年頃だったと思う、BS2-熱中時間~忙中趣味あり~と言う番組があり、本業を持ちながら、拘りの趣味を持ち続けている人を探していると、リサーチ会社の女性の方から番組出演の打診があった。 NHK渋谷のスタジオでの収録にも協力して欲しいとの話だったが、全国の茅葺模型の制作を目標に頑張っていた時期と、私の様な田舎者が渋谷のスタジオまで行くのが、おっくうで、福島まで来てくれるなら如何様にも協力するが、わざわざ東京(渋谷)までは行く気は無いと、丁寧にお断りした経過がある。

知人達に言わせると、NHKなんぞ、そう簡単に出演出来るもんじゃない!断ったお前は馬鹿だ?と言われたもんだが、所詮は素人の拙い趣味、本人は意外に後悔は無かったのである。

2007年春、何とか形だけだが、全国47都道府県の茅葺き模型が完成した。お陰様でワールドフォトプレスの「古民家スタイル」に茅葺模型を取り上げて頂き  №6,7,8の3巻連続で連載させて貰い、4巻目の№9までの取材までして頂いた。来春の私の茅葺き模型全国展(いわき市暮らしの伝承郷)にも担当の方とカメラマンの方が取材に、来られるとの事だったが、テレビに比べ雑誌はリハーサルも収録も無く、送った原稿メールに写真と活字をレイアウトした校正がメールで流れて来たのを確認するだけの、実に楽なもんだ。

話が横道にそれたが、全国の茅葺き模型が完成すると、タイミング良く、スカパーの担当者から、テレビの出演のメールがあり、電話で話だけは伺ったが、以前、熱中時間~忙中趣味あり~のリサーチの会社の方に丁寧な電話を頂いて、生意気にも出演を断った事を思い出した。前回、テレビ出演を断った理由の一つだった、茅葺模型の全県完成も終了した事だし、スカパーに出演する前にBS2の熱中時間のリサーチ担当の方に連絡をするのが筋道だと思い、そちらの都合が良ければ番組出演を引き受けますと、誠に軽率にも連絡を入れてしまった。 すぐに、前回の担当者の方から丁寧な電話を頂いた。

私が出演を了解すると、今度は番組を制作するディレクターの方から電話が入る。一度、「お話しと作品を拝見したい」との事で、7月の後半の休日だったが、わざわざJR常磐線のスーパーひたちに乗って駆けつけてくれた。面接の様なお話と、模型の写真や工房の写真を撮り持ち帰って番組に出演して貰うかどうか?会議をするそうなのである。 後日、担当のディレクターさんから、電話で正式な出演要請を頂いた。その時に今、製作中の秋田県由利本荘市鳥海の○田家の本物と模型の精度と本当に実物を見て製作しているのか?一緒に同行して家主さんとの話の様子や取材の様子も収録したいと相談され、8月の初旬の休日に秋田県由利本荘市鳥海の○田さんの家に向かい簡単な平面図を観せて雑談しながら、事情を説明して、NHKが取材に来たら協力して下さい。とお願いし奥さんに快諾を得て自宅に戻る。2度目の訪問だった。

8月の盆明けに、NHKのディレクターとカメラマンの方と、山形県新庄駅で待ち合わせ、秋田県由利本荘市鳥海町の○田家に向かう。自宅から350キロ、午前11時少し過ぎに到着。早速、持参したお土産を渡し、三面図を見ながら、実物との相違点を探す。外観は問題ないが、居間の柱の位置が1間(約180cm) ずれていた。自宅内部は、中々拝見出来なく、筆談が多いので、三面図を見ながらでも、相手が慣れて居ない分だけ、以外に大変な作業なのである。

鳥海での収録も午後2時を過ぎ、お礼の挨拶をして、新庄市まで戻る。「一茶庵本店」の美味しいラーメンを食べて新庄駅で別れる。ここでも余談だが新庄は、「愛を~とりもつ」鳥のもつラーメンが非常に美味しいく今や新庄最上名物になっている。臭みも無く、あっさり系のラーメンだ。一茶庵支店、梅家(うめや) さんがお勧めである。それと「くじら餅」の素朴な味も捨てがたい。勿論、山菜は言うまでも無く素晴らしく美味しい。 それから、お世話に成っている運送屋の社長の自宅でお茶と美味しいスイカを御馳走になり、午後9時自宅に戻る。いわきから、秋刀魚の開きをお土産に持っていって、尾花沢のスイカをお土産に貰う。そのスイカの糖度は日本一の呼び声が高く 旨い!大きなスイカを2個頂いたので、休み明け新潟の工場に持って行って社員達に御馳走した。 次回、自宅に収録に来た時には、屋根工事の作業を撮りたいと言われ、盆休み返上で急ピッチでの模型作りだった。

9月初めの日曜日、再びディレクターとカメラマンの方が自宅に来られた。午前10時過ぎにJR常磐線湯本駅に迎えに行き、11時少し前、自宅着、早速、撮影に入る。屋根葺き工事、襖や戸の製作工程、屋根の刈り込みの様子、屋根裏部屋の模型、私の自宅も内外まで撮影していった。 随分撮ったけど、これで放送は何分なの?と聞いたら秋田のと今回のいわきの収録を編集して5~6分位ですね!なな、何?これだけ撮影して5,6分?渋谷のスタジオでゲストの方達と録画を観ながら15~6分の編集で合計24,5分にまとめるらしい。何と無駄な収録が多いんですね?と尋ねたらもう一度は来れないから、出来るだけ多くの作品や付随する物を収録するとの事。

私が旅先で茅葺き民家を取材する時、ついつい多くの写真を撮るのと共通点がある様に思う。自宅で5時近くまで撮影して貰い、湯本駅まで送り、今回の福島撮影も無事終了となった。後は9月9日(日)の渋谷でのスタジオ収録を残すのみとなった。 渋谷スタジオまで運ぶ模型は、今回制作中の模型を含め、11点。美術輸送で運との事。日通さんの担当者の方が来られて、作品を見て、驚いていた。

担当のディレクターさんの言葉で印象深かったのは、NHK製作の、この手の番組は子供が観ても、お年寄りが観ても充分に理解出来るように作らなければ成らないんですよと、話していた。民放さんとはその辺が違うようである。何とか由利本荘市の民家模型も撮影に間に合った。

9日10時までには、入って欲しいと言われているので、自宅を車で6時半には出発しなくては成らない。やっと今回のテレビ出演のゴールが見えてきた。

9月8日土曜日 日通の係りの方達がスタジオに運ぶ模型を引き取りに来る。電話を貰ったが自宅には女房しか居ないが、大丈夫か?と尋ねたら、搬入模型の写真を撮ってあるので大丈夫との事。さすが~!プロ!放送は何時ですか~?10月7日BS2で午後9時からと教えた。必ず観ますから!社交辞令の旨いこと?セールスドライバーさん。

またまた余談だが、ディレクターに聞いてみた?趣味人が多い地域はあるの?即答で東海、近畿地方に趣味人が多いとの事!やはり西国の方達の方が幕府が開かれたのが早いせいか?東北に比べ気候が温暖で生活水準が高いからか?幕府が江戸に開かれなかったら、東北の発展はは50年位は遅れたと大げさだが、個人的には思ってしまう(笑)北東北でまともに米が作れるように成ったのも、ここ100年位だろうか? 散策して、西国の建造物や民家建築を観ても、生活の豊かさを感じる。東北の人達は今でも春から冬の準備をしているから、趣味に費やす時間が少ないのか?今回の○田家の前庭を見ても、寒の時期に切り倒した雑木を春に山から運び出し、薪を割り夏から秋にかけて乾燥させて冬に備えているのである。 東北の趣味人達よ!恥ずかしがらずに出てきて下さい。しかし自分から手をあげて情報を発信する方は×が多いそうでなのある。達人の多くは、中々マスコミに出たがらないそうである。 そう!内気な東北人は本当は達人が多いと考える事にしよう?

9月9日(日曜日) いよいよ渋谷のスタジオに向かう。10時まで入らなければ成らなかったのが11時に変更になり、自宅を7時半に出発!西門の到着したらディレクターの携帯に電話をすることに成っているが、愛車のナンバーを控えていっても、尚、担当者が西口まで迎えに来ると言う厳重なセキュリティーだった。 愛車に乗り込み湯本インターの入り口へ!ETCのゲートが開かない?ど、どーした?カードは入っているが?岡山~四国の散策以来のETC通過だが?ルーフボックスを取り付けたからだろうか?ETCがエラー?故障?取り付けしてから1年2ヶ月。保障期間は過ぎている。帰りに、ルーフボックスを取り外して試してみたが、やはりゲートは開かない?エラー!故障の様だ。しかしオークションで買った新品のETC車載機だがこんなに早く壊れるのか?バーが開くものだと思いレーンに入って来るのだから、一つ間違えれば事故が起きる。常磐道、首都高と順調に進み、10時を少し回った頃、無事、NHK渋谷放送局到着。結局、ETC車載機故障のため、通勤割引や首都高の割引きが使えなかった(泣) 西口で、私をリサーチしてくれた、女性とディレクターが出迎えてくれた。そして、控え室(楽屋)案内され、ドアに自分の名前の書いた個室に通される。そこでこれからの撮影の進行方法を打ち合わせをして、熱中時間の台本を渡される。ダダ台本?俺は役者じゃない?話す内容まで決まっているのかな?と思い、この通りのお話をするんですか?と尋ねたら、こんな内容での進行であって、話は自分なりに何でも好きなように話してください。台本は、あくまでも、たたき台ですから!と言われホッとした。 11時からダミーを交えて、緊張の中リハーサル。何とか無事終了して。午後2時からの本番に向けて昼食をとる。幕の内弁当の様な、のり弁のデラックス版の弁当だったが、それが結構美味しかった。

そして、午後2時過ぎからの本番!カチカチのコチコチ状態で本番突入!薬丸君や見慣れた芸能人達を間近にみて余計に緊張するが、自分の通ってきた道の話や模型の解説は難しいはずが無い。収録予定時間をオーバーして渋谷での収録を無事終える事が出来た。 自分なりの感想だが、30分の番組を作るのに、秋田、福島(自宅)、渋谷のスタジオでの収録、3日間の週末を費やした事になる。正直一度、引き受けてしまったから最後まで協力したが、今後もし、民放からの出演などの依頼が有った時には、考えてしまう。幸い此方の都合を聞いてくれて休みの日ばかりを選んで貰っての収録で助かったが、それにしても、私の様な者が出演する番組を作るにも多くの裏方スタッフの方達の目に見えない努力、協力によって番組が作られて行く事が良~く解った。 映画を作るに何億、何十億のお金が掛かる事が少し垣間見れた。出演者の何倍もの裏方さんやスタッフが居る事を渋谷のスタジオで感じた次第です。そして、アイドルでなく、本物?(芸能界に長く居続ける事の出来る方達)の芸能人は頭の回転が良いことを肌で感じた。興味が有る事、無い事でも台本を見て流れを感じてお話をしてしまう。アイドル(シブがき隊)から大きく成長した薬丸君、さすが~!お見事でした。

しかし、自分なりの拘りが、こんな形で世の中に紹介されるとは、予想もなかった。まず最初に私をリサーチしてくれた、牛○○明○さんに心より感謝する。そしてディレクターの木○さん、カメラマンさん秋田、福島収録とお付き合いを有難う御座いました。番組でもお話したが、最初から有名に成りたいとか、こうしたい、こうなりたいと考えて趣味をする人は皆無ではないか?動機はどうあれ、この趣味が自分の身の丈に丁度合っていたのかも知れない。興味があり何故、どうして?で本を買い調べ理解する。そんな事の連続だったなぁ~。 他人から観て馬鹿げた事や無駄な浪費に見える事も、「家族の協力」があり、多少暴走気味であっても長く続けられたから、ぼんやりとしか見えていなかった目標や夢に到達できる事もあるし、ある意味、世間や自分の回りに認められる事もある様な気がする。私の模型は、茅葺の民家の今を作りたい。出来るだけ観たままに表現したかったし、それを実践してきた。プロの作家さんは、生活のために、どうしても時間をお金に換算する事が多い。しかし、私の場合は余暇を製作に費やしている、あくまで素人、アマチュアなのである。 一つの茅葺模型作品を作るのに何年掛かったと、解説を観たり、聞いたり、する事があるが、それは製作時間ではなく、スタートから完成した過程であって、途中、お休みしていた時間も相当に入っているのではないか?と考える。何処まで拘って模型を作れば何年もの時間をかけて作品を作れるのだろうか? 私の作品はどんなに時間をかけても、夜と週末の作業で精々半年もあれば1棟の民家模型が完成出来た。私の作品はそんないい加減な品ばかりなのである。数ヶ月ではなく、数年かかったと言えば聞こえが良いのなら自分も真似しようか?作品の重みが出るか?価値が上がるかも知れないが、どんなに誇大表現しても、本物を見る目が有る人やその道の方には一目で解ってしまうものだ(笑)

そして、これからもし、かやぶきの民家模型を作ろうとか、作ってみたいとか?考えて居る方がおられましたら、指定民家(国、県、市町村からの指定文化財)を決して否定している訳ではありませんが、屋根の下に生活感のある、民家達を作られる事を希望します。指定民家は私達の様な素人が、わざわざ目を向けなくても、行政がこれからも保護、管理していく事でしょう。しかし、「模型作りのスタートには資料も完璧にそろっているので良いかも知れませんね」今世紀の中頃には、指定民家ではない、純粋な無指定のかやぶきの民家は、全国で何件残っているだろうか?その頃には、かやぶきの民家は保護地域でしか見られなく成る事でしょう。かやぶき屋根の下に住む方達との語らいは、私の、かけがえの無い心の栄養源ですし、楽しみです。長く営業の仕事をしてきた為か、頭を下げたり、人と話す事は気に成らないのである。 番組では、九州の茅葺き民家と放送されましたが、正確には、長崎県、宮崎県、鹿児島県で人の住む、かやぶきの民家を御存知でしたら、情報をお待ちしております。

収録した物の編集は、ディレクターはじめプロの方達がするものだが、今回の収録で撮る側と撮られる側との温度差を少し感じた。渋谷のスタジオでアリとキリギリスの石井君が紙芝居で、茅を採ってくれて居る父親のこと、ここ何年か散策に付き合ってくれる女房のこと。パソコンの師匠でもある娘のこと。自分の中で一番大切な部分の家族の協力、理解があっての趣味だと言う部分が時間の都合だろうか?カットされてしまった。照れもあり、家族には中々感謝の気持ちを伝えられないで居ただけに、特に寒中、茅の穂を採ってくれて居る父親に対して、テレビを通して感謝の気持ちを伝えられれば何よりだったのだが・・・・少し残念だった。

出演料??貰えるとは、思っていませんでしたが、秋田までの燃料代、往復の高速代、渋谷のスタジオまでの往復の高速代、首都高速料金、燃料代、総経費の半分にも成りませんでした。それでも、中々体験出来ない良い経験をさせて貰いました(笑) 先日、私をリサーチしてくれた女性スタッフの方から、スタジオのバックに描かれている歴代の出演者の似顔絵の中に私の似顔絵も描きあがったとのメールと写真が送付されて来た。お恥ずかしい限りだ。スタッフ一同の皆様にあらためて心より感謝いたします。

「熱中時間~忙中趣味あり~」をご覧になられた皆様、私はプロの模型作家ではありません。お金を頂いての模型の制作はしておりません。したがって貸し出しやリースなどもしては居ません。今までも、そして来年の茅葺き模型全国展(仮称)も出品料など一切、頂きませんし、今までも頂いたことは有りません。その代わりと言っては何ですが、搬入、搬出、展示のすべてを「いわき市暮らしの伝承郷」の手配でしていただく事になっています。御期待下さい。
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